Toride Art Project

明日、私たちは郊外に住むのだろうか。そこにある家は、どんな姿をしていていいのか。「あしたの郊外」で起こること、変わる風景を見てみたい。

「あしたの郊外」プロジェクトとは?

このプロジェクトは、これから郊外に増えて行く空き家や空き地に、アートの介入によって新しい変化を誘発する実験だ。
取手アートプロジェクト(TAP)が取手エリアの空き家を調査し、発掘する。それに対し、アーティストや建築家によるアイディアやデザインを公募し、物件オーナーや住み手、投資家などへ提案。アーティストと住み手、オーナーらとのマッチングが成立し、可能なものから実現していく、というプロセスをとる。またその工事費の一部を国土交通省が負担する。これは郊外政策のひとつでもある。
硬直した郊外の風景、その社会現象を、アートによって突き動かす試みである。

このプロジェクトで、何を探求するのか

このプロジェクトは二つのミッションが融合して始まった。その二つの目的や表現は、結果的に同じ方向へと収斂されていくかもしれないが、初期の設定は対照的だ。

取手アートプロジェクトの延長線にある探求

ひとつは「取手アートプロジェクト(TAP)」が15年間、取り組み続けてきた、郊外とアートの関係性についての模索の延長線上にある。
東京藝大の先端芸術表現科が1999年に取手に開設され、このエリアは図らずも最先端のアートの実験場となった。同科が発起役となってスタートしたTAPが2000年にそのテーマとした「家・郊外住宅」が示すように、このアートプロジェクトは典型的なベッドタウンのなかで郊外の文脈に並走するように展開されてきた。
そしていつしか、ホワイトキューブのなかで表現されるのとも、豊かな自然のなかで表現されるのとも違う、郊外の毒と温かさの両方を併せ持つ、独特の世界観を醸し出すことになる。
アーティスト一人一人がそれを意識していたかは定かではないが、生み出された作品群はそれを如実に語っているように思う。
「あしたの郊外」は、その延長にあるプロジェクトである。
日本にはたくさんの美術館/ホワイトキューブがある。地方都市では毎年アートイベントが開催されている。日本人アーティストの作品の一部はアートマーケットでは高値で取引もされている。
そんなアートシーンのなかで、取手という都会でも田舎でもない、ドラマティックでも美しくもない、コミュニティがたいして残っているわけでもなく、成長も衰退も見込みにくい……、究極の普通の街でこそ、あしたを浮かび上がらせる作品が生まれるのではないか。それが私たちの楽観的な観測だ。

政策のなかで、アートはどういうスタンスをとるのか

そしてもうひとつ、興味深いプロットが偶然に加わった。国の関与だ。国土交通省の「住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業」という事業である。
過疎化が進む郊外は今、大きな社会問題になっている。高齢化、単身化、増える空き家……。今後消滅する郊外も多数出てくるだろう。国土交通省も郊外でこれから起こる諸問題の解決の糸口を模索している。
この事業では全国に22 のモデルとなる郊外エリアが設定されている。プログラムは子育て支援や、高齢者の見守りといった福祉面の色合いが強い。そのなかに、なぜか「取手アートプロジェクト」の活動が採択された。リストのなかでは異様に浮いた存在であることは言うまでもない。
アートという飛び道具のような手段を使って、郊外の現実にぶつかり続けて来た先に、何らかの突破口があるのかもしれない、そう国も思ったのだろうか。それも状況としておもしろい。

今、アートの役割とは何だろうか。そう問い続けている人もいるのではないか

震災の後、被災地では未曾有の状況のなかなのに、機能的、物質的には役に立ちそうにないアートやそのアクティビティが、妙に人の気持ちやつながりを元気づける風景を見た。まだうまく言葉には整理できないが、こういうときにこそ人間は決定的に無用性を欲すのだなと、不思議に思った。同時にアートの役割の一端をクリアに感じた瞬間でもあった。
郊外の明日も今、たくさんの課題と希望を抱えている。それは現代社会の縮図であり、新未来の日本の風景の象徴でもある。そのなかでアートがどんな役割を演じられるか、見てみたい。
「あしたの郊外」は、そのトリガーとなるプロジェクトだ。

馬場 正尊(郊外を考える人・建築家・株式会社OpenA代表)

「あしたの郊外」をつくるプラン公募 実施決定!あしたの郊外プロジェクト 「キックオフ・シンポジウム」開催 2014年10月20日(月)19:00-21:00 [開場 19:15]会場 BankART NYK NYKホール 参加費 500円[当日支払・定員100名・事前申込制]

シンポジウムは終了致しました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
レポートをこちらで公開しております。

郊外を考える人たち=

  • 馬場正尊(建築家・株式会社OpenA代表)
  • 池田修(BankART1929代表・PHスタジオ代表)
  • 目(現代芸術活動チーム)
  • 栗栖良依(スローレーベル ディレクター)
  • 森司(東京アートポイント計画ディレクター)
  • 熊倉純子(東京芸術大学音楽環境創造科教授)

閉塞的なイメージが語られて久しい「郊外」が、ドラマティックな理想郷になりうる可能性とは?

新たな住まい手を待つ空き家が数多くある、郊外都市・取手。
この街を舞台にスタートする「あしたの郊外」プロジェクトは、郊外での”暮らし方“を空き家に仕掛け、発信してゆく試みです。
クリエイター、アーティストをはじめとした「郊外でこそ可能な生き方」のプラン公募、そのプランを生かした実居住を通じて、まだ見ぬ「あしたの郊外」の実現を目指していく社会実験です。
「郊外を考える人」たちがさまざまな視点から妄想する「あしたの郊外」とは?本シンポジウムでは、このプロジェクトのけん引役となる「郊外を考える人」それぞれが議論を交わし、郊外の未来に切り込みます。
メンバーによる郊外プラン発表もあります。
まるごとこのプロジェクトのステイトメントを体現する本シンポジウム。
対象は、新しい郊外の風景を見たい人、自らの発想・妄想を郊外に投じて、新たな生き方を探る人。
そんなみなさんの参加をお待ちしています。

  • 本シンポジウムには公募の参加有無を問わず、どなたでも参加いただけます。
  • 「あしたの郊外-Post Suburbia-」は、取手アートプロジェクトとOpenAの共同プロジェクトです。

参加申し込み

第1回プラン公募は終了しました。
集ったプランはこちらからご覧いただけます。

募集要項PDFをダウンロード 公募受付応募フォームへ

公募受付期間:2014年10月20日(月)― 2015年1月31日(土)

美術、建築から身体表現、コミュニティデザインほか、提案のジャンルは問いません。さまざまな角度からあしたの郊外の可能性を模索する、参加者・共創者を募ります。

参加申し込み

公募の対象ともなる「取手アート不動産」取扱い物件を公開します。
取手のアートスポットなども合わせて自由に巡っていただくことができます。参加ご希望の方は、開催前々日までにお申し込みください。

  • 第1回:2014年11月1日(土)11:00―17:00
  • 第2回:2014年12月7日(日)11:00―17:00

Baba Masataka 馬場正尊 建築家 株式会社OpenA代表

■ 郊外とは何だったのか?

かつて郊外に住む理由は明快だった。
増える人口、過密な都心環境、上がってゆく地価……。
そこから逃れるように、子育ての場所や穏やかな環境を求めて、人々は郊外に向かった。
しかし今、人口は減少に転じ、郊外に向かう理由が薄らいでいる。人は再び周縁から中心へと向かう。
そして郊外の風景は急激に変わりつつある。
同時に、郊外は、そこで育った僕らのふるさとでもある。
均質に並ぶ家々や団地も、モノに溢れるスーパーマーケットも、直線的に走るバイパスも、
僕らにとってはなつかしい原風景であり、ときに美しいと思う。
それはある時代の日本人にとって、共通の感受性ではないかと思うことがある。

■ アートによる、新しい郊外

そんな郊外に興味がある。
目的をいったん失った家は、構造と痕跡を残した魅力的な表現のための器にも見える。

使われなくなった空き家は、「住むための機械」という近代の呪縛から解かれ、
機能ではない価値によって再生するのを待っているのかもしれない。
密集がやわらぎ、中途半端な空間とつながりを残す街は、新しいコミュニティの実験場かもしれない。
明日、私たちは郊外に住むのだろうか。
そこにある家は、どんな姿をしていていいのか。
アートという手段を持って、「あしたの郊外」で起こること、変わる風景を見てみたい。

1968年佐賀県生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2002年Open A を設立。都市の空地を発見するサイト「東京R不動産」を運営。東京のイーストサイド、日本橋や神田の空きビルを時限的にギャラリーにするイベント、CET(Central East Tokyo)のディレクターなども務め、建築設計を基軸にしながら、メディアや不動産などを横断しながら活動している。主な著書に『都市をリノベーション』(NTT出版)、『団地に住もう! 東京R不動産』(日経BP社)など。主な作品に「観月橋団地再生計画(2012年、グッドデザインサステナブルデザイン賞)」「TABLOID(2010年)」など。

Ikeda Osamu 池田修 BankART1929代表 PHスタジオ代表

「あしたの郊外」

郊外と団地。このふたつの言葉にあまりいい思い出はない。
中学一年生だったと思う。転校してきた女の子が近くにはじめてできた団地に住んでいたので、もの珍しさにつられて、学校がおわると仲間と自転車でそこにのりつけ、時折たむろしていた。1970年頃の夏、女の子が団地の屋上から飛びおりた。何故飛びおりたのか、そしてどこからきた子なのかは記憶にない。何もわからない友達が、何もわからない理由でいなくなったということだけを強烈に覚えている。

郊外といえば、1997年の神戸連続児童殺傷事件だ。小学校の門の前に生首をさらすというニュースの第一報から郊外の臭いがしていた。低廉な団地群、巨大な貯水タンク、金網で囲まれた送電設備、学校……。都市が解決不能を早々に決めつけてつくった街。「廉価」「子育て・教育」「環境」という絶対神を餌に、知らない場所に知らない人を集め、都市を構成している一部の部品だけでつくられた、顔のない街。まるで水に潜っているような感覚で、テレビ画面に写し出される郊外という劇場を、ずっと見入っていたのを覚えている。

団地と郊外。もちろん、そこに住んでいる人にとっては数十年の歴史があり、コミュニティがあり、幸せに暮らすユートピアのような郊外が存在する(した)ことも理解している。だから、そこで育った人たちを不幸だなんて、思ったことはない。一方、のっぺらぼうの顔をした街が誰も知られずに歳をとり、新しい世代を生成することもできないまま、年老いた人たちだけが、年老いた建物と暮らしている街が多くあることも知っている。

僕は考えてしまう。「あしたの郊外」のまえに「きのうの郊外」ってあるのだろうか?

目の前におこっている問題をなんとかしなければいけないのはわかっているけど、何か途方もない大きなものを忘れてきてしまった郊外という不可知の存在の前で、たじろいでしまう。

もちろん、だからこそという言い方はある。「今あるものを肯定し、そこから始めること」
これは、僕がこれまでずっと信じて実行してきた言葉だ。だから「郊外」に対しても、同じように何かトライすることはできるかもしれない。でも、今僕はこのスイッチを押すことができない。原発と同じといえば誤解を与えるかもしれないが、「きのうの郊外」の亡霊が大きすぎて、立ち向かっていく勇気がでないのだ。

だから、今日の「あしたの郊外」の前に、僕は「きのうの郊外」について、しばらくは、どっぷりつかってみたいと思っている。

都市に棲むことをテーマに美術と建築を横断するチームPHスタジオを発足。美術館での展覧会、屋外での美術プロジェクト、建築設計等、活動は多岐にわたる。1986~1991年ヒルサイドギャラリーディレクター。2004年からBankART1929の立ち上げと運営に携わり、数々の企画展やアートプロジェクト、アーティスト支援、出版等を行なってきている。大学や行政機関、街づくり、アート関係での講演・シンポジウム参加も多い。

Me 目 現代芸術活動チーム

アーティスト荒神明香、wah document(南川憲二、増井宏文)によって組織された現代芸術活動チーム。2012 年より活動を開始。鑑賞者の「目」を道連れに、未だみぬ世界の果てへ直感的に意識を運ぶ作品を構想する。2013 年に瀬戸内国際芸術祭「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」、2014年資生堂ギャラリーにて「たよりない現実、この世界の在りか」展。

Kris Yoshie 栗栖良依 スローレーベル ディレクター

イタリアのドムスアカデミーにてビジネスデザイン修士号取得後、東京とミラノを拠点に世界各国を旅しながら、さまざまな業種の専門家や企業、地域コミュニティを繋ぎ、商品やイベント、市民参加型エンターテイメント作品をプロデュースする。2010年、右脚に骨肉腫を発病し休業。翌年、右脚に障害を抱えながら社会復帰を果たし、横浜ランデヴープロジェクトのディレクターに就任し、スローレーベル設立。ヨコハマ・パラトリエンナーレ総合ディレクター。

Mori Tsukasa 森司 東京アートポイント計画ディレクター 取手アートプロジェクト実施副本部長

1960年愛知県生まれ。公益財団法人東京都歴史文化財団 東京文化発信プロジェクト室地域文化交流推進担当課長。水戸芸術館現代美術センター主任学芸員を経て、東京文化発信プロジェクト東京アートポイント計画の立ち上げから関わり、ディレクターとしてNPO等と協働したアートプロジェクトの企画運営、人材育成プログラムを手がける。2012年7月より「Art Support Tohoku-Tokyo(東京都による芸術文化を活用する被災地支援事業)」のディレクターも務める。

Kumakura Sumiko 熊倉純子 東京藝術大学音楽環境創造科教授 取手アートプロジェクト実施本部長

(社)企業メセナ協議会事務局勤務を経て2002年より東京芸術大学音楽環境創造科にて教鞭をとる。取手アートプロジェクト(茨城県)、アートアクセスあだち―音まち千住の縁(東京都)など、地域型アートプロジェクトに携わりながら、アートマネジメントと市民社会の関係を模索し、文化政策を提案する。著書に「社会とアートのえんむすび1996-2000――つなぎ手たちの実践」、「アートプロジェクト―芸術と共創する社会」など。

お問い合わせ

あしたの郊外プロジェクト事務局
(特定非営利活動法人 取手アートプロジェクトオフィス内)

〒302-0012 茨城県取手市井野団地3-19-104
取手アートプロジェクト実施本部
TEL+FAX:0297-72-0177(電話は火・金13:00~17:00)
Email:tap-info@toride-ap.gr.jp
Web:www.toride-ap.gr.jp/ Twitter:toride_ap

本事業は国土交通省平成26年度住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業です。

主催 :
特定非営利活動法人 取手アートプロジェクトオフィス
株式会社オープン・エー(Open A)
協力 :
ダンチ・イノベーターズ!チーム/株式会社DOG一級建築士事務所