新井 今回、greenz.jpと組んで連載を行う理由は?
羽原さん 郊外ってそのままにしておくと、ずっとシュリンク(縮小)していってしまうでしょう。これからの郊外は、人が減っていって、全部が見慣れたロードサイド型の町並みで、文化も特色もない。そんなレッテルが貼られてしまっています。
一方でアートプロジェクトは、歴史的な文脈が深い場所、例えば、里山地域や海岸沿いといったような、ある程度年月を重ねている旧来の集落に入ってアーティストが歴史を読み解いた作品を見せていき、その土地やそこに住んでいる人の魅力を伝えるという形で開催されているケースが多いです。
【対談こぼれ話4】「団地の特性は、ほぼみんながルーツの異なる“よそ者”。だから、よそ者に対して寛容なんです」(羽原さん)
羽原さん でも、実は郊外だからこそ生まれつつある経緯や蓄積があって、それを私たちは扱ってきました。郊外のアートプロジェクトだったから、リアルタイムで住んでいる人と共有しながら、暮らしの文脈を今生きている人たちとつくってこられたんです。
そのように自分たちが住んでいるところに関与できる、ということをgreenz.jpで発信できたら、自分の感性を大事にして生きていきたい人々に知ってもらえて広まっていくんじゃないか、と期待しています。
【対談こぼれ話5】「アートに対する欲求って、あまねくすべての人が持っていると思うんです。そのフックに引っかかった時、人が水を得た魚のように生き生きするのをみると、こっちも『やられた!』ってうれしくなります。アートプロジェクトの面白さですね」(羽原さん)
中嶋さん 何も「郊外に住んでください」ということじゃないんです。
私自身も最初「あしたの郊外」って聞いた時に、なぜか夕焼けをイメージしていました。でも、どうしてそんな寂しい風景を思い浮かべたんだろう。取手市には、都内のワンルームで生活するのと同じ金額でもっと広い住まいで楽しく暮らしている人たちがいるのに。
家で畑をしながら、東京で働く暮らしもできるんですよ。
小林さん その豊かさを郊外に住んでいる人自身が忘れてしまっているのかもしれないね。
中嶋さん だから、この連載を通じて「そういえば、あったね」って選択肢のひとつとして郊外のことを思い出してくれたらそれで十分!
(対談ここまで)
ぼく自身「TAP」の活動に心惹かれたのは、アートだからこそ生み出せる想定外の未来に希望の光を照らしたいからなのかもしれません。
その希望は、伝統文化という言葉があり、伝統芸能と呼ばれることはあっても、伝統芸術と言われることがないこの国で、まだまだトップアーティストや昔の画家にしか注目が集まらないアートというジャンルだからこそ、新しい歴史を拓くための余白を残しているはずだ、という妙な確信でもあります。
取手市では一体、どんなアートが生まれ、アーティスト活動が行われているのでしょうか。これからはじまる連載「あしたの郊外」をどうぞお楽しみに!
writer:新井作文店
※この記事はgreenz.jpに2016年04月05日に掲載されたものを転載しています。