インターネットから郊外を探る

2016.7.11

インターネット
中原寛法

  • PROFILE

インターネット中原寛法

生まれも育ちも本社も、岡山県井原市。2003 年千葉大学大学院デザイン科学専攻修了後、翌日からフリーランス。「インターネットを使って、インターネットの外側を、もっと楽しく、そして、より豊かに。」をモットーに、さまざまなウェブの企画・デザイン・開発を行う。Google / KDDI のキャンペーンのディレクション・デザイン、ソーシャルギフトサービス giftee、地域 × クラウドファウンディング FAAVO の立ち上げ、スタンディングデスク ERECTUS の開発など。クリエイティブ・ディレクター / デザイナー / 株式会社 nD 代表取締役 / 株式会社giftee 共同創業者。社員はサーファーとフォトグラファー。

僕は小学校の全校生徒が 40 人くらい、同級生が 11 人(なぜか全員男子)の岡山の田舎で育った。そして、いまインターネットに関わる仕事をしている。

インターネットは無限に広がり続けている空間だ。そこにみんなが限りなく自由に、ドメイン(.com や .jp)と呼ばれる地名・屋号をつけ、「機能と役割」を定義したウェブサイトやアプリを立ち上げる。マイホームを建てたり、分譲住宅に住んだり、路面店を出したり、図書館や公民館をつくったり、大規模商業施設を建設したり。人が創造したインターネットにありながら、ある種の「自然」をつくり出そうとしたり、そして、インターネット以降でしか実現できなかった「機能と役割」を生み出したり。

そして、インターネット上でも同様に、その「機能と役割」に出合った文脈や、「機能と役割」毎の繋がりの質と量が、わたしたちの経験や記憶に刻まれる強さとなる。例えば、子どもの頃住んだ街のよく遊んだ公園のような、一人暮らしを始めたころの最寄り駅のホームような、出張先でみつけた路地裏の居酒屋のような。そんな経験や記憶として刻まれる「機能と役割」は、インターネットの中にもあるはずだ。

ここ最近は、田舎育ちの僕からすると、田舎がこそばゆいほどの好奇の眼差しを浴びている気がする。そして、その多くは「都会から見た田舎の機能と役割」として編集された「田舎」だったりする。僕は子どもの頃旅行に行くと、都会に憧れるには、目に映るものすべてが都会の入口に思えた。そこが郊外と呼ばれる場所であっても。僕にとっての「田舎から見た都会の機能と役割」を満たしていたからなんだと思う。

そんな僕にはまだ「僕にとっての郊外の機能と役割」がわからない。だが、ある郊外の街と出合うとき、インターネット上での既視感がひょっとすると手がかりになるのかもしれない。インターネットを彷徨いながら、そんなことを考える。きっと「僕にとっての郊外の機能と役割」に出合える文脈があるはずだ。